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2021.10.21

〈Nailie(ネイリー)〉個人事業主9割。ネイリストの課題はCtoCで解決する

2018年にリリースされた、ネイルをしたい人と、好みのネイリストをマッチングするアプリ『Nailie(ネイリー)』。このプロダクトは、CtoCに特化したプラットフォームサービスを提供しているC2C PTE. LTD. が開発を支援している。

2021年10月現在1万5000人のネイリストが登録、約80万ダウンロードを誇る人気アプリ「Nailie」はいかにして誕生したのか?

現在全国30店舗を展開しているネイル&アイラッシュサロン「TRU NAIL&EYELASH」を2007年に21歳で立ち上げ、C2C PTE. LTD.と協業で同アプリを運営している株式会社ネイリーの浅倉健吾社長に聞いた。

■「ネイリストの9割は個人事業主」で起きる問題点

Nailieが従来のネイルサロンの予約サービスと最も違うのは、登録者がサロン単位ではなくネイリスト個人単位で、ユーザーが自分の好みのネイリストを直接探せることだ。

「従来のクーポンサイトや予約サイトはサロン単位でお店の情報や口コミを掲載しているので、自分のイメージと違ったという失敗体験がわりと多いんです。同じサロンに所属するネイリストでも、実際に施術する人によって経験や好みのスタイルなどには差があるので」

従来のクーポンサイトや予約サイトが掲載課金なのに対し、従量課金のNailieはサロン情報の掲載自体は無料で、売上からマッチング手数料をもらう仕組みだ。

また、個人でも自由に掲載できるNailieの掲載順位は口コミ評価などが反映される。

資金力があるほど集客できる大手予約サイトより、ネイリスト個人の正当な評価に即したこのシステムは、大きなユーザーメリットと言える。

「ネイル業界は大手のクーポンサイトや予約サイトが強すぎて、そうしたサイトへの掲載費が年々高くなっています。お金を払うほど集客ができる仕組みで、広告費を出せない個人サロンは新規の集客が課題になっています」

「この広告費が固定費としてサロン運営を圧迫している上、クーポンサイトではどうしても価格競争になるので、客単価や1店舗当たりの売上は減少傾向にあるのが現状です」

一方でネイルサロンの経営は設備や商材などの初期投資が小さく、国家資格なども不要で、マンションの一室で施術するネイリストもいるほど場所の制限がない。

美容師などと比べると個人事業主として独立しやすく、ネイリストの9割は個人事業主とも言われ、そんなフリーネイリストたちに浅倉氏は業界が成長する可能性を見出したそうだ。

「副業などの方も合わせて約9万人のネイリストがいるとも言われていますが、大手クーポンサイトは多額の掲載費がかかってしまうため、情報を掲載できていないネイリストが非常に多いです。」

「僕は店舗展開しているサロンオーナーでもありますが、現状は90%を占める個人事業主のネイリストにとって安心できる環境が整っているとは言えません。ネイリストが個人の力で活躍できるプラットフォームができれば、一気に業界構造が変わります。だからこそ、誰かがやる前に自分でそのプラットフォームをつくろうと思ったんです」

■「イケてなかったら、それっきり使わない」

『Nailie』の仕組み自体は成功させる自信があったそうだが、実際のアプリサービスに落とし込む過程にはいろいろ苦労もあったそうだ。

「アプリの開発当時、CtoCマッチングってUberが少し有名だったくらいで、僕らもC2C社の開発メンバーもお互い1発目のプロダクトだったので本当に試行錯誤でしたね。実装はしませんでしたが『ネイルがキレイに写るカメラ機能を付けよう』とか、僕が少し迷走した時期もあって(笑)」

「結果的に着想からβ版リリースまで約1年半かかりました。でも、C2Cの担当の方は当時からとても親身に対応してくれて、本当に二人三脚で進めてこられたと思っています。開発面に関しては全幅の信頼を置いています」

SNSで数万フォロワーを誇る人気ネイリスト約20名を“公式ネイリスト”としてスカウトし、Nailieのβ版を2018年1月にリリースした。

「人気ネイリストの皆さんも我々の課題感に共感してくれましたし、Nailieのブランディングにも大きく貢献していただいたと思っています。デザインやUIなども含めてアプリのブランディングにはかなりこだわっていますね」

「当社は女性スタッフも多いのですが、開発に際して彼女たちやターゲット層に行ったインタビューで、そもそもの機能以前に『パッと見の印象がカワイイかどうかで使い続けるかどうかが決まる』『ダウンロードしてイケてなかったら、それっきり使わない』と言われたので(笑)」

事前登録フォームを設けると3ヶ月で1000人以上のネイリストが登録。

2018年8月には全国へ展開させ、現在も毎月500人前後という勢いでネイリストの登録があるという。

「ネイリスト個人で集客から決済までアプリ内で行え、カード決済なので各ネイリストの設定で前日や当日のキャンセルに対して、キャンセル料のチャージが可能な点も支持されています」

「ネイルの施術はマンツーマンで、一人あたり2時間くらいかかるので、多くても1日4〜5人しか施術できない。一日2件キャンセルがあると40〜50%売上がダウンする。直前のキャンセルはネイリストにとって死活問題です」

■「Nailieで月売上100万円」のネイリストも誕生

クーポン機能がないNailieはネイリスト個人の個性やこだわりを武器に集客しやすく、副業ツールとして使いやすいのも特徴。

Nailieで月の売上が100万円を超えたネイリストもいるという。

今後のサービス展開として、浅倉氏とC2Cは現在も協業で新機能「ネイリーNOW」の開発を進めている。

「現在のNailieも含めて既存の予約サービスは直近の予約管理がしづらいことも課題でした。電話予約も含めて複数の予約サービスを使っているネイリストは、目の前の施術しながらそれぞれのサイトへ最新の予約状況を反映させるのが難しい」

「特に忙しい人気サロンほど、予約サイトの表示では1時間後、30分後の枠が空きになっていても実際は埋まっている、ということがよく発生するんです」

「ネイリーNOW」はすぐネイルをしたいユーザーが大体の価格やネイルのイメージを入力すると、位置情報を元に直近の時間帯で予約枠に空きがある半径1キロ圏のネイリストへ通知が飛び、マッチングできる仕組みだ。

この機能は昔からユーザー側からの要望として特に多かったそうだが、直近の予約を埋めることが難しいネイリスト側の需要も高いという。

ネイリスト登録者が増えたこのタイミングで東京からサービス提供を始め、将来的には全国に展開する予定とのことだ。

「ネイリストになりたくてもネイルサロンに勤める選択肢が現実的ではない人は多い。待遇面などを考え一般企業に就職する方も少なくないし、ネイルサロンは予約商売で急な休みなども取りづらく、子育てをしながら働くことも難しいのが現状です」

「でも、Nailieなら自分の空いた時間で、土日の1時間だけ予約を取ることもできる。ネイリストの多様な働き方を実現し、ユーザーが自分好みのネイリストに出会いやすくなることで、ネイル業界を盛り上げたいです」

 業界の“負”をCtoCの切り口でスマートに解決していくNailieの挑戦はまだ始まったばかりだ。