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仕込みマッチングサービス「シコメル」が変える飲食業界のDX化とは

 コロナ禍以降、大きく変容を遂げた業界の一つが飲食業界だ。

 居酒屋やファミリーレストランでは、営業時間の短縮や酒類提供の自粛などの影響を大きく受けた一方で、テイクアウトやデリバリーの需要は拡大した。同じ業界でありながら、その形態によって明暗が分かれることになったここ二年。

 そんな中、大きく成長しているサービスがあるのをご存知だろうか。

 それが飲食店向けに提供されている仕込み済み商品を受発注できるサービス「シコメル」だ。

 2021年以降、約3倍以上のスピードでアプリの登録店舗数が増え、2021年10月には1000店舗を突破。

 飲食業界のDXをけん引する「シコメル」は、なぜここまでの勢いで成長しているのだろうか。

 そこには、飲食業界のDX化によって広がった新たな需要の存在があった。

 話を聞いたのは、2019年に株式会社シコメルフードテックを創業し、C2C PTE. LTD.と協業で「シコメル」を運営している西原直良氏だ。

株式会社シコメルフードテック代表取締役・西原直良(にしはら・なおよし)氏

 

◆飲食業界の企業間取引はDX化できていない 

 今年、Retty株式会社が発表した「飲食店のDX事情(https://japan.cnet.com/article/35176607/)」によると、現在約74%の飲食店経営者の店で、何らかのITツールを導入しているという。

 特に、Pay Payに代表されるキャッシュレス決済やOMAKASEなどのオンラインでの予約システム、iPadを使ったPOSレジシステムなどのデジタルツールは積極的に活用されている。

 しかし、食材の受発注や仕入れといった企業間取引におけるITツールの導入は、対消費者側に比べて優先度が低く、DX化できていないのが実情だ。

「一部の大手飲食チェーンでは、飲食店と食品卸業者での受発注業務において、作業効率化システムを利用しています。しかし導入コストが高いため、実際に導入できているのは業界全体の1割未満という印象です。ほとんどの小規模飲食店では、いまだに電話やFAXなどのアナログな方法でやりとりをしているのです」

「アナログな方法を続けていたら、取引先が増えるほど煩雑な作業が増加し、人件費もかさみます。また、作業が属人的になるため、注文内容の書き間違いやファクスの紛失といったリスクも高まります」

 受発注業務におけるミスはその額の大きさから飲食業界にとっては命取りなのだ。

 

◆急増する「ゴーストレストラン」は 食品管理と味の担保に課題

 そんな受発注業務における改革が求められる中、コロナ禍が飲食業界にさらなる混乱を及ぼした。

 昨年以降、家賃が負担となり休業や閉店する飲食店が相次いだのは周知の通りだ。

 たとえば、この1年3か月で、都内の大手居酒屋チェーン店は1048店舗も激減している(https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210812_01.html)。

 その一方、コロナ禍に置いてデリバリーの需要が拡大したことから勢いを増すのが、実店舗を持たずシェアキッチンや間借りのキッチンで調理を行い、商品をデリバリーする「ゴーストレストラン」だ。

 ICT総研の発表した「2021年 フードデリバリーサービス利用動向調査(https://ictr.co.jp/report/20210405.html/)」によると、フードデリバリーの市場規模は2021年に5,678億円、2023年に6,821億円まで拡大すると予想されている。

 ゴーストレストランはイートインを想定した飲食店に比べて人件費や家賃などのコストを抑えられるものの、利用できる冷蔵庫や食材の保管場所が限られているため、必要な仕込みを適切に管理することが大きな課題となっている。

「ゴーストレストランは、消費者のもとへ届く時間が早ければ早いほど評価が上がるため、商品の8割以上を事前に仕込んでおく必要があります。しかし調理できる場所や時間が限られているため、発注時の見積もりを誤ってしまうと、仕込みが間に合わない、またフードロスが発生するなどの問題が起きてしまいます。また、大手チェーンに比べてブランド力や認知度が低いゴーストレストランの場合、リピートして利用してもらうためには『美味しさ』の担保もより必要になります」 

 これらの課題にいち早く目を付けたのが、シコメルフードテックが提供する「シコメル」だ。

 

◆「シコメル」を使うことで、人件費を8%カット

 「シコメル」はその名の通り、お店で提供するメニューの「仕込み」済み商品を発注できる飲食店向けのアプリ。

 利用方法は、まず「シコメル」が店舗から事前にレシピを預かり、提携工場にてオーダーメイドでレシピを再現し、店舗専用の「仕込み済み」商品としてアプリに登録する。

 店舗側は、その中から仕込みたい商品をアプリから注文するだけ。注文したメニューは2~3日で届き、1店舗から利用可能だ。

(左)飲食店は「マイストア」から専用の仕込み済み商品を発注することができる。(右)発注内容は「シコメル」上で管理が可能に。

「今まで、複数の仕入れ先に電話やFAXで行なっていた受発注業務をアプリひとつで完結させることができます。ある焼肉チェーンは、お酒以外の仕入れ先がすべてシコメル』です。仕込み済みの肉のパックを開けてタレをかけたり、カットサラダにドレッシングをかけたりするだけでよいので、ほぼアルバイト店員のみでお店を運営することができます」

 対して、一般的な焼肉店では、肉を扱える専門的な人員が必要なため人件費が売上の20%を占めることも少なくないが、シコメルを導入した焼肉チェーンでは人件費を12%まで減らすことができたという。

 また、毎日入れ替わるアルバイト店員が仕込んだ食材より、シコメルの提携工場でレシピから導入している飲食店からは「完全に再現した食材のほうが味がブレず、品質を担保することもできる」と評価を得ている。

「私は20年にわたり飲食業界におり、独自の仕入先とのネットワークを築いてきました。結果、現在は約150の工場とつながりを持っています。その中から『シコメル』のビジネスモデルに合った工場72社と提携しています。『シコメル』の使いやすさだけでなく、信頼できる工場経由で仕込み済み商品を提供していることもあり、利用している飲食店の解約率はほぼゼロです」

 

◆経営陣にIT出身者は0人。それでも開発できた理由は…

 ここで驚きの事実がある。

 シコメルフードテックの主要メンバーはIT企業出身者ではないため、創業当初、メンバーにはエンジニアがおらず、案はあってもアプリ開発ができない状態だったという。

 そこでアプリ開発にあたってパートナーとしてタッグを組んだのが、C2C PTE. LTD.だ。

「アプリの開発当時、開発や運営はC2C PTE. LTD.社に一任していました。素人の僕たちがゼロから携わるよりは、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)するまでプロに依頼するほうが、初期の開発コストを抑えられると判断したからです」

 また、2021年9月に実施した1.5億円の資金調達も、C2C PTE. LTD.からサポートを受けている。

「今までのビジネスはデッド・ファイナンスで経営していましたが、シコメルフードテックは上場を見据え、より事業を飛躍させるためにエクエティ・ファイナンスをする必要がありました。しかし、私たちにはその知見がなかったため、資金調達に必要な資料作りなど、グロース支援もしていただきました」

 

◆「シコメル」に新たな機能が追加

 2月下旬から「シコメルストア」「受発注機能(ベータ版)」を展開予定。飲食店のみならず、ゴルフ場や介護施設など食事を提供されている施設や企業もアプリをダウンロードすることで、「シコメルストア」に掲載されている商品を発注することができる。発注できるものは、有名店の仕込み済み商品、カット野菜やカット肉、また調味料など、幅広い商品群から選ぶことができる。また「シコメル」上にある「マイストア」に自店舗の取引先を追加することができる。これにより、「シコメル」より仕入れの一元管理が可能になるのだ。

 また、飲食店やシェフが持つレシピに新たな価値を与える仕組みも提供する。

「レシピの保有者や保有店舗と共に開発した仕込み済み商品を『シコメルストア』にて販売し、購入に応じてロイヤリティを支払う仕組みを提供します。そうすることで、調理師や店舗の売上につながり、さらにひとつの商品を大量につくることで、工場の生産性を上げることも期待できます」

 登録店舗数は2022年5月末に5,000、そして3年以内に20,000を目標としている。

 急成長するシコメルフードテックが目指す未来とは。

「まずは飲食業界の労働環境を改善したいという目標があります。今の飲食業界は一日の労働時間を8時間に収め、週2日休むのが難しいほど忙しいです。新型コロナの影響でこの業界を去った人も多く、さらなる人手不足や、それに伴う廃業が懸念されます。私たちは『シコメル』を通じ飲食店の経営を効率化させることで、業界の労働環境を改善したいと思います。そして、飲食業界が抱える様々な問題に対しテクノロジーを活用して解決したいと考えています

 その実現に向けて、西原氏が始めた飲食業界の改革は確実に歩を進めている。